子どものころに住んでいた家は窓を開けなはしても夜遅くまで熱気のこもる、普通に木造モルタルのアパートに住んでいました。
熱い空気をかき回すだけの凪の時間の楽しみは、お散歩か花火。
お散歩は坂を上っていった先にある崖の上の小道がお気に入りでした。造船所のクレーンの向こうのぽっかりと浮かんだ島の間の海に沈む夕日が見渡せるはるか向こうには明日までが見渡せそうでさえあって、そして、お昼の時間が終わる切なさをぽっちりと光に溶かしていました。
蚊取り線香。
冷たい麦茶。
井戸で冷やしたすいか。
造花のついたゴム草履。
手作りのシロップをかけたかき氷。
カゴに鳴くセミ。
夏の記憶。