のうち、「右大臣実朝」を読み終えました。
この右大臣実朝とは、中学校のときに一文だけ出会っています。
明るさは滅びの姿であろうか 人も街も
暗いうちは滅びぬ(原文は,ひらがなでなくてカタカナ)
大好きだった、
宇宙海賊キャプテンハーロックの最終回の,最後の最後の画面に、
残った言葉でした。
背景が真っ白で皮肉なことに「あかるさ」に埋もれた文章が知りたくて、
番組に質問ハガキを出したらご丁寧に返事が来ました。
もちろんハーロックさんでなくて、ディレクターさんだったけど。
でも,右大臣実朝を手に取るにはまだ数年の時間が必要でした。
初めて読んだのは大学時代くらいだったはず。見事に記憶に残りませんでした。
このたび「こんなに面白い小説を読んだことがない」という、
爆笑問題のどっちかの人(ごめんなさい,テレビは疎くって、、)の、
推薦の言葉を見つけたので、さらに20年くらいぶりに読みました。
「吾妻鏡」は竹宮惠子さんも取り上げた題材なので、
右大臣実朝のあとで、竹宮マンガもついでに便乗して読みました。
(あとがきに寄ると,竹宮さんの吾妻鏡との出会いが「右大臣実朝」とか)
竹宮さん、彼女のマンガはもともとスケールが大きいのだけど、
太宰さんのは,更にひっくり返るくらいスケールがでかいんです。
歴史のみそっかす、、、つまり,父頼朝は希有の政治家。
叔父義経は、見事な戦上手。
裏で人を操る後白河法王にしても、
北条義時、泰時親子や、頼朝の妻政子。。。。にしても、
個性豊か、才能にあふれた人の中にいるために
どうしても出来の悪い三代目将軍として描かれる実朝を、太宰さんは、
理想の支配者として描くために細心の注意を払います。
竹宮さんは,通常の、実朝は頼りない、というイメージで押していました。
私は、平家ゆかりの地で育ち、
平清盛が,扇で沈む夕陽も舞い上げて音戸の瀬戸を掘削した、、、、
そう言う伝説に染まって生きてきているので、
貴族政権の中に新しい武士の居場所を作った清盛に親しみを感じます。
「清盛派」というところ?
そんな私が,太宰さんの魔法にふっとかかるんです。
貴族に虐げられていた武士の「長」として、
また、「都」の歴史を脈々と受け継いできた天皇家や貴族のありようを
尊重できる器の大きな人間として、
たとえ実際は、無駄な闘いが起きないように目を配らせていても、
ほのぼのと暖かく凛としたリーダーとして目に映る。。。ように。
人間にはそれぞれある得手不得手。。。
その不得手の部分を追求しないで、どこまでその姿を描けるか。
...太宰さんはそこまでは考えていなかったかもしれませんが
私には、人を肯定することこそに、
自分の値打ちがある、と思うかのような、
優しい,ともすると弱々しくも見える笑顔を想像し、
自分の中の無力さやら、わがままさやら、
足りないものを否定しない強さ,と言うものがこの世に存在する
素晴らしさを、小説を読む間は感じられたことが、心地よかった一冊でした。
でも、なんか,大きな愛情に包まれる小説でした。